芥川龍之介の愛読書の印象:幼少期からの読書の変遷

芥川龍之介の愛読書の印象:幼少期からの読書の変遷

芥川龍之介は、その生涯を通じて読書の好みが変わっていきました。彼の経験を通して、その変遷について見ていきましょう。

幼少期の愛読書

芥川龍之介が子供の頃に最も好きだった本は「西遊記」でした。この本は彼の愛読書であり、西洋には「西遊記」に匹敵する比喩の物語はないと感じていました。有名なバンヤンの「天路歴程」ですら「西遊記」には敵わないと彼は思っていました。

もう一つの愛読書は「水滸伝」です。これも彼は今でも読み続けていました。彼は一時期、「水滸伝」に登場する108人の英雄の名前をすべて覚えていたことがあります。当時、押川春浪の冒険小説よりも、「水滸伝」や「西遊記」の方が遥かに面白かったと感じていました。

中学時代の読書

中学に入る前から、芥川龍之介は徳富蘆花の「自然と人生」や樗牛の「平家雑感」、小島烏水の「日本山水論」を読んでいました。同時に、夏目漱石の「猫」や泉鏡花の「風流線」、内田魯庵の「あられ酒」も読みました。これらの本は、彼の感性を育てました。

高校時代の読書

中学を卒業してからは、芥川龍之介は様々な本を読みましたが、特に好きな本はありませんでした。ただ、ワイルドやゴーチエのような華やかな小説が好きでした。これは彼の性格にも影響していたでしょうし、日本の自然主義的な小説に飽きていた反動でもあったと思います。

大学時代の読書

高校を卒業する前後から、芥川龍之介の趣味や物の見方が大きく変わりました。それまで好きだったワイルドやゴーチエの作品が嫌いになり、ストリンドベルクに傾倒するようになりました。当時の彼は、ミケランジェロのような力強い芸術以外はすべて価値がないように感じていました。これは「ジャン・クリストフ」などの影響だったと思います。

大学卒業後の読書

大学を卒業した後も、この考え方は続きましたが、次第に燃えるような力の崇拝が薄れ、静かな力のある本に惹かれるようになりました。例えば、スタンダールやメリメエ、日本の作家では西鶴の小説が彼にとって面白く、役に立つ本でした。

晩年の読書

芥川龍之介は晩年に「ジャン・クリストフ」を読み返しましたが、昔ほど感動しませんでした。しかし、「アンナ・カレーニナ」を読み返してみると、昔と同じように素晴らしいと感じました。

終わりに

読書の好みは、人生のステージによって変わっていくものです。芥川龍之介の幼少期から晩年に至るまでの読書の好みの変遷を振り返ることで、彼自身の成長や変化を感じることができます。皆さんも、読書を通じて自分の変化を感じてみてください。