2025年8月2日

疑問から始めましょう
こんにちは。
「マイナス×マイナス=プラス」という計算ルールについて、しっかりと納得できていますか?
中学校では「ルールだから覚えてください」と教えられることも多いこの計算。しかし、「なぜそうなるのか?」という問いにしっかり答えられる人は、実はあまり多くありません。
本日はこの「−×−=+」という式が、どうして成り立つのかを、論理的な根拠と受験での実例を通して丁寧に解説していきます。
なぜ“負の数”が必要なのか
「負の数」とは何か。身近な例を挙げてみましょう。
・気温が0℃を下回るとき(−3℃など)
・銀行口座が赤字(−10,000円)
・借金などの「マイナスの所持金」
これらはすべて、「足りない」「逆方向の量」を表すために負の数が使われています。
数学的には、次のように定義されます。
→ 任意の数 a に対して、a + (−a) = 0
この「−a」は、aの加法の逆元(元に戻すための数)と呼ばれます。つまり、負の数はただの記号ではなく、“打ち消す操作”として定義された必要な数なのです。
「−×−=+」はなぜ正しいのか?
では、なぜマイナス×マイナスがプラスになるのでしょうか。直感では理解しづらい部分を、数学の原則から確認していきましょう。
次の等式を見てください。
0 = (1 + (−1)) × (−1)
左辺は明らかに0です。右辺を分配法則に従って展開します。
0 = 1×(−1) + (−1)×(−1)
ここで、1×(−1)=−1 と定義します。
0 = −1 + (−1)×(−1)
この式を変形すると
(−1)×(−1) = 1
つまり、「−×−=+」という計算は、分配法則を守るために自然に導かれるものなのです。
入試でよくある誤答例
次に、受験生がよく間違える実例を見てみましょう。
例題: −3x + 2 > 11
多くの受験生がこう変形してしまいます。
−3x > 9 ⇒ x > −3 (誤り!)
ここでのミスは、「マイナスで割ったときに不等号の向きが変わる」というルールを見落としていることです。
正しい解き方は
−3x > 9 ⇒ x < −3 (正解)
この誤答は、模試(例:河合塾 2023年共通テスト模試)でも15%程度の受験生が間違えると言われており、要注意のポイントです。
高校数学とのつながり
負の数の正しい理解は、高校数学のあらゆる分野で役立ちます。
・二次関数:グラフの軸や頂点が負の値になるケース多数
・三角関数:
sin(−θ) = −sinθ
cos(−θ) = cosθ
→ 負の角度の計算を誤ると、解答が真逆になってしまいます。
「−」という記号は、単なるマークではなく、“逆の操作をせよ”という数学的命令と捉えるのが正しい理解です。
この視点で負の数を見直すことで、関数、グラフ、三角関数、ベクトルなど、あらゆる単元での符号ミスを減らし、数学全体の理解力も高まります。