2024年4月16日
文章
「だが、こういうものをはいたら、ずいぶん温かいだろうな。」と、夜番はひとりごとをいいました。「なんて上等なやわらかい革がつかってあるのだろう。」うわおいぐつはぴったり夜番の足にあいました。「どうも、世の中はおかしなものだ。いまごろ中尉さんは、あの温かい寝床のなかで横になっていればいられるはすなのだ。ところが、そうでない。へやのなかをいったり来たり、あるいている。ありゃしあわせなお人さな。おかみさんもこどももなくて、毎晩、夜会にでかけていく。おれがあの人だったらずいぶんしあわせな人間だろうな。」
解説
この話の一部では、夜勤の警備員が、ある将校の高級なブーツを見つけて、試しに履いてみる瞬間が描かれています。警備員は、ブーツの高品質と温もりに感激し、その時から自分と将校の暮らしや幸せについて考え始めます。ここで大切な考え方が出てきます。それは、「幸せは見た目じゃない」ということです。警備員は、もし自分がその将校だったら幸せに決まっていると思っています。でも、実際にはその将校も自分なりの問題や不幸を持っているんです。
この話の部分は、人はよく他の人の暮らしを理想的だと思い込んだり、自分にないものを欲しがったりすることを示しています。しかし、話が進むにつれて、本当の幸せや満足は、見た目や持っている物、社会的な地位で決まるわけではなく、自分の心の中と、それをどう受け止めるかによると教えてくれます。さらに、警備員が将校の暮らしをうらやむことを通じて、この話は、人間の感情移入や想像力を探り、時には誤解を生むことがあるとも示しています。