『実証主義』と『進化論』 19世紀の学問と芸術に与えた影響

『実証主義』と『進化論』 19世紀の学問と芸術に与えた影響

生徒: 19世紀に自然科学がどのように発展したのか、教えてください。

先生: 19世紀は、まさに科学の黄金時代でした。たとえば、1847年に「エネルギー保存の法則」が発見されたんですが、これは「エネルギーは形を変えてもなくならない」っていう考え方ですね。これによって、自然界の仕組みがより明確に理解できるようになりました。それから、ファラデーやマクスウェルが電磁気学を発展させ、のちに電信や電話の発明につながる技術が生まれました。

それから、化学の分野では、リービッヒ有機化学を発展させました。彼の研究のおかげで、生命の仕組みを科学的に説明する道が開けたんです。そして、生物学の分野では、1859年にダーウィン『種の起源』を発表しました。これは当時ものすごい衝撃を与えましたよ。だって、それまでの「神がすべてを創造した」という考え方に対して、「生物は自然選択で進化する」って言い出したわけですから。宗教界との対立も激しくて、賛否両論の大論争になったんです。

生徒: ??進化論ってそんなに衝撃的だったんですか? でも、科学の発展って技術や理論だけじゃなくて、社会にも影響を与えたんですね。人文科学にはどんな変化があったんですか?

先生: 実は、自然科学が進歩したことで「社会も科学的に分析できるんじゃないか?」という発想が出てきたんです。その代表例が、フランスの哲学者オーギュスト・コントが提唱した「実証主義」です。彼は、「社会現象も、物理や化学のように法則があるはずだ」と考えたんですね。それを明らかにしようとして生まれたのが、社会学という学問なんです。

それから、心理学の分野でも大きな変化がありました。1879年、ドイツのヴントという学者が、ライプツィヒ大学に世界初の心理学実験室を作ったんです。これまでは「心の動き」は哲学の領域だったんですが、「本当に心の仕組みを実験で解明できるのか?」と考えたんですね。この試みが、今の心理学の基礎になっています。

生徒: へぇぇ、19世紀って新しい学問がどんどん生まれた時代だったんですね。でも、芸術の世界にも科学の影響ってあったんですか?

先生: そうです。むしろ、芸術は科学の影響を強く受けました。たとえば、文学の世界では写実主義(リアリズム)が広がりました。それまでの文学は、どちらかというと理想や想像の世界を描くものが多かったんですが、19世紀になると、「実際の社会や人間をありのままに描こう」という流れが出てきたんです。たとえば、フランスの作家フローベールは、『ボヴァリー夫人』(1857年)で、登場人物の心理や社会の現実を細かく描写しました。

さらに、これを発展させたのが自然主義です。作家のエミール・ゾラは「作家は科学者のように人間を観察すべきだ」と考え、『居酒屋』(1877年)では労働者階級の生活を徹底的にリアルに描きました。まるで社会実験の記録みたいな小説が生まれたんですね。

生徒: なるほど。では、絵画や音楽にも影響があったんでしょうか?

先生: ええ、もちろん。特に絵画では、光と色の科学的な研究が影響を与えました。印象派の画家たちは、瞬間的な光の変化や色の見え方を科学的にとらえようとしました。たとえば、モネの『印象・日の出』(1872年)なんかは、その典型です。

生徒: なるほど。。芸術も科学とリンクしていたんですね。でも、19世紀の終わりにはどんな変化が起こったんでしょうか?

先生: 19世紀末になると、「科学では人間のすべてを説明できるわけじゃないのでは?」という疑問が強まってきました。たとえば、哲学ではニーチェが「神は死んだ」と宣言し、従来の価値観や合理主義に対して疑問を投げかけました。

生徒: 科学と人文科学は、お互いに刺激し合いながら発展していったんですね。

先生: そうですね。そして、19世紀の終わりには、科学の発展が限界にぶつかった瞬間でもありました。でも、それによって新しい考え方が生まれ、20世紀のさらなる発展につながっていくんです。