2026年4月20日
YBA English Grammar
If I were はなぜ過去形?
仮定法の”現実からの距離”をゼロから解説
“If I were you…”──なぜ現在のことを話しているのに過去形なのか。この疑問を解くカギは、時制ではなく「現実からの距離」という概念にあります。
英語の過去形には、「時間を遡る」用法と「現実から離れる」用法の二種類があります。仮定法とは、過去形を使って「これは現実ではない」と宣言する文法です。時間の話ではなく、リアリティの話なのです。
01過去形は「時間」ではなく「距離」を表す
仮定法でつまずく理由はほぼ一つです。「過去形なのに今の話をしている」という見かけの矛盾。でも、そもそも過去形には二つの仕事があります。ひとつは「昨日の話」をすること。もうひとつは「現実ではない話」に一歩引くこと。仮定法の過去形は後者です。
直説法 ── 起こりうる条件 If I have time tonight, I’ll call you. 今夜時間があれば電話するよ。 現在形 ── 実際にあり得る | 仮定法過去 ── 非現実な仮定 If I had more time, I’d learn Arabic. もっと時間があればアラビア語を学ぶのに。 過去形 ── 現実には時間がない |
02「were」はなぜ I・he・she にも使うのか
仮定法過去では、主語が I / he / she / it であっても were を使います。これは「事実ではない」という強いシグナルを出すための専用の形です。現代の口語では was も使われますが、were を使うことで「これは現実の話ではない」ということを文法レベルで宣言できます。
If I were a professional athlete, I would train six hours a day.
もしプロのアスリートだったら、毎日6時間練習するだろう。
実際はアスリートではない ── were がその非現実を宣言する
If she were here right now, she would know exactly what to say.
もし彼女が今ここにいたら、何を言うべきかわかるはずなのに。
she に対しても were ── 「いない」という現実が前提
仮定法過去:If + 主語 + were / 動詞の過去形 〜, 主語 + would / could / might + 動詞の原形
03仮定法過去完了 ── 過去の「もしも」には二重の距離が必要
「あの時こうしていれば」という過去の後悔・反実仮想を表すには、さらに一段階遠くへ離れる必要があります。それが had+過去分詞(過去完了形)です。現実の過去からも距離を置くために、文法がもう一つ「遡る」仕組みになっている。この「二重の距離」という感覚を掴めれば、形を丸暗記しなくてよくなります。
If I had studied harder, I would have passed the exam.
もっと勉強していれば、試験に合格できていたのに。
過去の後悔 ── 実際には勉強が足りなかった
If we had left ten minutes earlier, we wouldn’t have missed the train.
あと10分早く出ていれば、電車に乗り遅れなかったのに。
起きてしまった現実への反実 ── もう変えられない過去
仮定法過去完了:If + 主語 + had + 過去分詞 〜, 主語 + would / could have + 過去分詞
04wish の後ろにも「距離の過去形」が来る
I wish + 過去形 は「〜だったらいいのに(でも現実は違う)」という意味です。wish はすでに「叶っていない願望」というニュアンスを持っているので、後ろの過去形は「距離」の働きをしています。if と全く同じ論理です。
I wish I could speak another language fluently.
もう一つの言語を流暢に話せたらなあ。
現実には話せない ── could が「今の非現実」を表す
I wish I had taken that job offer when I had the chance.
あの時あのオファーを受けていればよかった。
wish + 過去完了 ── 過去の後悔バージョン
wish の使い分け
| wish + 過去形 | 今の現実への願望(でも現実は違う) |
| wish + 過去完了 | 過去の現実への後悔(もう変えられない) |
仮定法 早見表
| If I were〜 | 仮定法過去 | 現実には違うことを前提とした仮定 |
| If I had done〜 | 仮定法過去完了 | 実際には起きなかった過去への反実 |
| I wish I could〜 | wish+仮定法過去 | 現実にはそうでないことへの願望 |
| I wish I had done〜 | wish+仮定法過去完了 | あの時こうしていれば、という後悔 |
| If it is〜 | 直説法(仮定法ではない) | 実際に起こりうる条件文 |
仮定法の過去形は、過去を言うための形ではない。現実ではないことを示すために、あえて一歩引いた形を使っている。それだけです。「昔の話」と「距離の表現」── 同じ形に二つの仕事を持たせた、これが英語という言語の設計です。
YBA教育研究会 ── 英語文法シリーズ