2025年5月22日
数学A|集合と論理
ド・モルガンの法則とは?
集合と論理をつなぐ”反転”の公式
「〜でない」をひっくり返すと何が起こるか。
ド・モルガンの法則を理解すれば、集合も論理も一気にクリアになる。
📋 この記事の内容
- ド・モルガンの法則とは何か
- 集合での公式(ベン図で確認)
- 論理での公式(「かつ」「または」の反転)
- 直感で覚えるコツ
- 入試によく出るパターン
- 《深掘り》なぜ「かつ」が「または」に変わるのか
1. ド・モルガンの法則とは
ド・モルガンの法則(De Morgan’s laws)とは、19世紀のイギリスの数学者・論理学者オーガスタス・ド・モルガン(Augustus De Morgan)が体系化した、集合と論理に関する基本法則です。
💡 ひと言で言うと?
「AかつB」の否定は「AでないまたはBでない」になり、
「AまたはB」の否定は「AでなくかつBでない」になる、という法則です。
高校数学A「集合と命題」で必須の公式であり、情報科学・プログラミング・電気回路など幅広い分野でも使われます。
2. 集合でのド・モルガンの法則
公式(集合)
法則①
A ∩ B = A ∪ B
「A∩Bの補集合」=「Aの補集合 ∪ Bの補集合」
法則②
A ∪ B = A ∩ B
「A∪Bの補集合」=「Aの補集合 ∩ Bの補集合」
ベン図で確認しよう
🔵 = 該当する領域(色付き) ⚪ = 該当しない領域(白)
法則① : A ∩ B = A ∪ B
のみ
(白)
のみ
A ∩ B
(中心の∩以外すべて青)
のみ
(白)
のみ
A ∪ B
(← 同じ領域!)
法則② : A ∪ B = A ∩ B
(白)
(白)
(白)
A ∪ B
(A∪Bの外側だけ青)
(白)
(白)
(白)
A ∩ B
(← 同じ領域!)
具体例で確かめる
例題
全体集合 U = {1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10}
A = {2, 4, 6, 8, 10}(偶数)
B = {3, 6, 9}(3の倍数)
A ∩ B = {6} (偶数かつ3の倍数)
A ∩ B = {1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 9, 10}
A = {1, 3, 5, 7, 9} | B = {1, 2, 4, 5, 7, 8, 10}
A ∪ B = {1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 9, 10} ✓ (一致!)
3. 論理でのド・モルガンの法則
集合の公式を「命題(命題論理)」の言葉に置き換えると、次のようになります。
公式(論理)
法則①
¬(p ∧ q) ≡ (¬p) ∨ (¬q)
「pかつq」の否定
=「pでない または qでない」
法則②
¬(p ∨ q) ≡ (¬p) ∧ (¬q)
「pまたはq」の否定
=「pでない かつ qでない」
集合 ↔ 論理の対応表
| 集合の言葉 | 論理の言葉 | 記号 |
|---|---|---|
| 積集合(A ∩ B) | かつ(AND) | p ∧ q |
| 和集合(A ∪ B) | または(OR) | p ∨ q |
| 補集合(A) | でない(NOT) | ¬p |
日本語の例で理解する
「彼は数学が好きで、かつ英語も好き」の否定は?
✗ 誤りやすい答え:「彼は数学が好きでなく、かつ英語も好きでない」
✓ 正しい答え:「彼は数学が好きでない、または英語が好きでない」
「かつ」の否定は「または」に変わる点がポイントです。
どちらか一方でも「好きでない」が成立すれば、元の文は否定されます。
4. 直感で覚えるコツ
🔄
「否定」で∩と∪が入れ替わる
補集合をとる( をつける)と、∩と∪が必ず入れ替わる。これだけ!
⚡
「かつ」↔「または」の交換則
論理なら「¬(かつ)=(でない)または(でない)」。
否定するたびに∧と∨が入れ替わる。
🧲
「分配」と逆のイメージ
否定を「中に入れる」と、∩→∪・∪→∩になる。掛け算の分配則と対比して覚えよう。
🎯 語呂で覚えるなら
「補集合を取ったら、記号が逆になる」
∩ → ∪、∪ → ∩、かつ → または、または → かつ
5. 入試によく出るパターン
《深掘り》なぜ「かつ」が「または」に変わるのか
ここが最大のつまずきポイント。まず「間違った直感」を見てほしい。
❓ 問題:次の命題の否定は?
よくある間違い
「今日は雨が降っていなくて、かつ風も強くない」
→ 「両方をひっくり返せばいい」という直感。これは間違い。
正しい答え
「今日は雨が降っていない、または風が強くない」
→ どちらか一方でも当てはまれば、元の文は否定される。
では、なぜ「または」になるのか?
「かつ(AND)」は、両方が成り立つときだけ真になる、非常に厳しい条件です。
逆に言えば、「かつ」を偽にする(否定する)には、どちらか一方が崩れれば十分です。
🔗 「鎖」のイメージで考える
「雨が降っている かつ 風が強い」は、2つのリングがつながった鎖のようなもの。
この鎖を切るには、どちらか1本のリングを外せばいい。
↓ 否定する(鎖を切る)
「雨が降っていない」または「風が強くない」
(どちらか一方が切れれば、鎖はバラバラになる)
もう1例:「または」を否定する場合
「彼は数学が得意、または英語が得意」の否定は?
「彼は数学が得意でない、または英語が得意でない」
「彼は数学が得意でない、かつ英語も得意でない」
「または」はどちらか一方でも成り立てば真。これを否定するには両方とも崩さないといけない。
だから否定は「かつ」になる。
「かつ」は厳しい条件 → 崩すには一方だけで十分 → 否定は「または」
「または」はゆるい条件 → 崩すには両方崩す必要 → 否定は「かつ」
まとめ:ド・モルガンの法則
補集合をとると「∩」と「∪」が入れ替わる
論理では「かつ(∧)」の否定は「または(∨)」、「または(∨)」の否定は「かつ(∧)」
入試では「否定命題の作成」「対偶の構成」「n(A∩B)の計算」などで頻出
集合と論理の対応(∩↔∧、∪↔∨、補集合↔否定)を押さえれば両方に使える
YBA教育研究会 | 数学コラム