2025年10月11日

英語の前置詞って何? ― in, at, on…どれを使えばいいのか迷う人へ ―
英語の前置詞(prepositions)といえば、in, on, at, during, since, to…など、どれも短くて一見地味な単語です。しかし、実際には会話や文章の中で非常によく使われる、英語の土台ともいえる重要な要素です。それだけに、正しく使えていないと、ちょっとした違和感のある表現になってしまうこともあります。今回は、そんな前置詞の基本的な働きや使い分けのポイントについて、やさしく、かつ体系的に解説していきます。
まず、前置詞とは何のためにあるのでしょうか。ざっくり言えば、名詞や代名詞が文中の他の語とどんな関係にあるかを示す言葉です。関係の内容にはさまざまありますが、大きく分けて「場所」「時間」「方向・目的」などがあります。
たとえば、「We had lunch at the new cafe.」という文では、「at」が「どこで?」という情報を伝える役割を果たしています。この「at」は特定のスポット、つまり“点”のような場所を示しており、「in」とはニュアンスが異なります。「in」を使うと「カフェという空間の中で食べた」ことを示すのに対して、「at」では「そのカフェという場所で食べた」という、より具体的な位置に焦点が当たります。
また、「She’s waiting outside the station.」では、「outside」が駅との空間的な関係を表しており、前置詞がどこにいるか、どこで何が起きているかを伝えています。時間に関係する前置詞の例としては、「I couldn’t sleep during the flight.」があります。「during」は「〜の間ずっと」という意味を持ち、ある出来事や期間との関係を示します。この場合、飛行中ずっと眠れなかったという時間的な背景が明確になります。
さらに、「He’s lived here since 2020.」という文では、「since」が「いつから」という出発点を表しています。ここで「for」との違いに注意が必要です。「since」は過去のある時点から今までの継続を意味しますが、「for」は期間の長さを表します。たとえば、「He’s lived here for five years.」と言えば、「5年間住んでいる」という意味になります。
もう一つ混同されやすいのが、「to」と「for」の違いです。「Please give this to her.」では、「to」が動作の対象を指しており、「誰に渡すのか」という問いに答えています。対して、「I bought this for her.」の「for」は、「その人のために」という意味を持ち、目的や利益を表します。どちらも「彼女に関係する」表現ではありますが、その関係の種類が異なります。
このように、前置詞は単に名詞をつなぐ道具ではなく、その関係性の「質」や「方向性」を明確にするための鍵となる要素です。ちなみに、前置詞がつなぐのは「句」や「節」ではなく、「名詞(または代名詞)と他の語」です。ここでよく混同されるのが接続詞ですが、接続詞は文と文、または句と句をつなぐ働きをします。たとえば、「and」「but」「because」などは接続詞ですが、「like」は前置詞であり、この点を取り違えると混乱のもとになります。「I swim like a fish.」という文では、「like」は「〜のように」という意味の前置詞として働いており、接続詞ではありません。
前置詞には100種類以上あるといわれていますが、日常英語でよく使われるのはそのうちのごく一部です。したがって、すべてを一気に覚えようとするのではなく、まずはよく使う前置詞に絞って、使い方を理解することが効果的です。特に、in, at, on のように場所に関係する前置詞や、since と for の時間的な違い、to と for の使い分けは、多くの学習者がつまずきやすいポイントです。
理解のコツとして、「at は点」「in は空間」「on は接触」といったイメージでとらえる方法があります。たとえば「at the bus stop」は“点”を意識し、「in the car」は“囲まれた空間”、“on the wall”は“表面に接している”という具合です。このように視覚的・概念的に理解することが、前置詞の正しい運用につながります。
前置詞は一見地味ですが、英語を自然に話す上で欠かせない存在です。ただ暗記するのではなく、「なぜその前置詞が使われているのか」という理由に目を向けること。それが、英語を“使える”ようになる第一歩です。