アリストテレスの“偶然”論から考える、自分の人生に納得するヒント

アリストテレスの“偶然”論から考える、自分の人生に納得するヒント

偶然と必然のあいだ――運命にどう向き合うか

「これって、運命だったのかな?」

そう思ったのは、大学のサークルで隣に座ったひとりの友人と、今でも10年以上つき合いが続いていることに気づいたときだった。もともと行く予定のなかった説明会。急に時間が空いたからなんとなく顔を出して、偶然そこで出会っただけ。でも、今では人生で一番信頼できる人のひとりになっている。

あれは偶然だった。でも、それだけじゃなかった気もする。あのとき話しかけなければ、きっと何も始まらなかったし、最初の印象がよくなければ関係も続かなかったかもしれない。「たまたま」のようでいて、「自分の選択」も確かにそこにあった。

アリストテレスは、物事には「偶然」と「必然」があると語った。偶然は予測できないもの、必然は原因から当然起こるもの。でも、現実の人生は、その両方が入り混じっていて、白黒つけられないことばかりだ。

たとえば、事故で進路を変えた人が、その後にやりたいことを見つけることがある。恋愛の失敗が、自分を深く見つめ直すきっかけになることもある。その瞬間は「どうしてこんなことが」と思っても、後から振り返れば「あれがあってよかった」と思えることがある。

では、運命って結局なんなんだろう?
決まっているものなのか、それとも自分でつくるものなのか。

正直、今の自分にも答えは出ていない。でも、最近はこう思う。「何が起きたか」じゃなくて、「それをどう受けとめるか」で、意味は変わっていく。あの日の出会いが大切なものになったのは、あの後の時間を、自分たちが丁寧に育ててきたからだ。

運命は、自分ではどうしようもないもの、と思っていた時期もあった。でも今は、「運命をどう意味づけるか」は、少しだけ自分の手に委ねられている気がする。

偶然に出会いながら、そこに自分なりの意味や行動を重ねていく。それがたぶん、運命に向き合うってことなんじゃないか。

完全に納得のいく答えはまだ見つからないけれど、それでもこの問いとつき合い続けていくこと自体が、大事なことなのかもしれない。