2024年4月22日
文章
さて、若いひとりの志願助手がありました。雨もざんざん降っていましたが、この人はぜひ外へ出る用がありました。それもほんの十五分ばかりのことです。門番に頼んで門を開けてもらうまでもなかろうと思いました。ふと見ると、夜番が置いていった上靴がありました。これが幸福の上靴だとは知りませんでした。雨の日にはちょうど良さそうなものと思い、それを履きました。そして、さくの前に立ち、「どうか頭が外に出ますように」と願いました。すると、頭はすんなり外に出ましたが、体は詰まってしまいました。「こりゃ肥りすぎているわい」と自嘲しながら、自由になりたい一心で悪戦苦闘しますが、動けませんでした。雨は降り続き、誰も通らない往来、門のベルにも届かない声。どうして抜け出そうかと考えあぐねる中で、最終的には、朝までそこに立ち尽くすことになりそうでした。
解説
この話の面白いところは、主人公が遭遇する大変なことや、それにどう立ち向かうかが描かれている点です。主人公は単に外に出たいと願っていて、頭が柵を通れた時、小さいけれども一つの成功を手に入れたと感じます。でも、すぐに新しい問題が起こります。これは、私たちの日常生活にも似ていて、小さな成功を味わった後でも、すぐに別の挑戦が待っていることがあります。そして、この出来事は物語で主人公が乗り越えなければならない色々な難題の始まりを示しています。読者にとっては、この先どうなるか予想できない展開で、話に夢中になる理由の一つです。さらに、このシーンは、不思議な力を持つ靴下が引き起こす出来事の一つとしても重要で、幸せや成功を目指す道は直線ではなく、思いがけない結果や問題があることを教えています。