2023年9月21日
古典文法シリーズ vol.1 古典文法のキホン |
「古文は、とにかく暗記」──そう割り切って向き合ってきた人は多いはずです。
たしかに覚えることは少なくない。けれど、古典文法の根っこにあるのは暗記ではなく、論理です。
その論理の入り口となるのが、今回テーマにする「用言(ようげん)」という概念です。
この論理を一度つかむと、古文の文章が「暗号」から「言葉」に見えてきます。
◆ 用言とは何か ── 一言で言うと |
用言を一言で定義するなら、
「動きや様子を表す、形が変わる言葉」 |
これだけです。
「形が変わる」というのがポイントです。まずはメンバーを確認しましょう。
◆ 用言の3つのメンバー |
用言に属する品詞は、たった3種類だけです。現代語とほぼ同じカテゴリです。
| 品詞 | 表すもの | 現代語 → 古文の例 |
| 動詞 | 動き・作用 | 食べる・書く → 食ふ・書く |
| 形容詞 | 様子・感情 | 美しい・嬉しい → 美し・うれし |
| 形容動詞 | 様子・状態 | 静かだ・綺麗だ → 静かなり・清げなり |
古文が特別難しいわけではありません。カテゴリそのものは現代語と同じです。問題は、形の変わり方のルールが現代語と少し異なることにあります。
なお、後で学ぶ「助動詞」も活用しますが、品詞分類では用言とは別に扱います。混乱しやすい点なので、頭の片隅に置いておきましょう。
◆ なぜ「用言」という名前なのか |
「用(はたらき)のある言葉」だから「用言」と呼びます。
文の主役は名詞(「花」「人」「月」)ですが、その主役が何をしているか、どんな状態かを説明するはたらきを担うのが用言です。
── 例文 ── ・花(名詞)が、咲く(用言=動詞) ・花(名詞)が、美し(用言=形容詞) ・花(名詞)が、あてなり(用言=形容動詞) |
よく教科書でセットになる「体言(たいげん)」は、その反対です。「体(からだ)のある言葉」=名詞のことで、こちらは形が変わりません。
| 用言 ── 変身する | 体言 ── 変身しない |
| 動詞・形容詞・形容動詞 | 名詞(犬・学校・月 など) |
| 後ろの言葉に合わせて語尾が変化する | どんな場面でも形は変わらない |
◆ 「変身」の正体 ── 活用とは何か |
用言の最大の特徴は、後ろに続く言葉に合わせて語尾が変化することです。この変化を「活用(かつよう)」と呼びます。
活用は「変身」のルールと言い換えてもいいでしょう。例えば動詞「書く」は、後ろに来る言葉によって語尾が次のように変わります。
・書か + ず(〜ない) ・書き + て ・書く。 (言い切り) ・書く + とき ・書け + ば(〜ので) ・書け。 (命令) |
語尾の変化を母音で整理すると、a・i・u・u・e・e と4つの段にまたがっています。だから「四段活用(よんだんかつよう)」と呼びます。現代語の「五段活用」の先祖にあたります。
この変化のパターンには名前があります。6つの「活用形」です。
◎ 6つの活用形(「書く」で覚える) |
| 活用形 | 書く の場合 | 母音 | 意味・接続 |
| 未然形 | 書か | a | +ず / まだ起きていない(未だ然らず) |
| 連用形 | 書き | i | +て / +き(過去) |
| 終止形 | 書く | u | 言い切り(文の終わり) |
| 連体形 | 書く | u | +とき / +人(体言に続く) |
| 已然形 | 書け | e | +ば / すでに起きた(已に然り) |
| 命令形 | 書け | e | 命令(言い切り) |
活用形の名前は、それぞれ意味を持っています。
・「未然形」= 未だ然らず = まだそうなっていない状態
・「已然形」= 已に然り = すでにそうなっている状態
名前の意味を知っておくと、どんな文脈で使われるかが自然に結びつきます。ただし、実際の判定では「名前の意味」だけでなく、後ろに何が続くかを見るのが一番確実です。意味と接続をセットで覚えましょう。
◆ 現代語感覚の落とし穴 |
「現代語と似ている」と感じた方は鋭いです。しかし、古文には現代人が必ず引っかかるトラップがあります。
例えば「着る」という動詞。
現代語:着ない / 着ます / 着る。 古 文:着ず / 着て / き。 |
古文の「着る」の言い切り(終止形)は、「き」の一文字だけです。「着る。」ではなく「き。」で文が終わります。
現代語の感覚で読むと「え、ここで文が終わってるの?」と脳がフリーズするのが古文の動詞の難所です。
◆ テスト頻出の「変格活用」9語 |
古文の動詞の大半は、これまで説明したルール通りに変化します。しかし、そのルールを完全に無視して自分勝手に変化する動詞が9語だけ存在します。これを「変格活用(へんかくかつよう)」と呼びます。
この9語は定期テスト・入試で頻繁に問われます。そして、これ以外の動詞も四段活用とは限りません。四段のほかに上二段・下二段・上一段・下一段など複数のパターンがありますが、これら通常の活用はルールに従って変化します。変格活用の9語だけが、そのルールから外れる特別な存在です。
| 種類 | 語(すべて覚える) |
| ナ行変格活用 | 死ぬ / 往ぬ(去ぬ) |
| ラ行変格活用 | あり / をり / はべり / いまそかり |
| カ行変格活用 | 来(く) |
| サ行変格活用 | す / おはす |
特に注意が必要なのはラ行変格活用です。普通の動詞の終止形はウ段(u)で終わりますが、ラ変のグループは終止形がイ段(i)で終わるという特殊ルールを持っています。
⚠ テストの罠:「あり」の連体形は? 普通の動詞なら終止形と連体形が同じ形でも、ラ変は違います。 終止形:あり(イ段) → 連体形:ある(ウ段) 「あり」が後ろに名詞を伴うときは「ある人」「あるとき」のように形が変わります。終止形と連体形が別の形になるのがラ変の特徴です。 |
◆ 確認問題(3問) |
第1問 ★☆☆ 古文:桜の花さけば、見に行く。 (現代語訳:桜の花が咲いたので、見に行く。) アンダーラインの「さけ」は何形ですか? |
▶ 解答:已然形(いぜんけい) 後ろに「ば(すでにそうなっているので)」が続いているので已然形です。語尾が「e(け)」になっているのを確認できれば完璧です。 |
第2問 ★★☆ 古文:夜の明くるは、いと心もとなし。 (現代語訳:夜が明けるのは、とても待ち遠しい。) アンダーラインの「心もとなし」は、動詞・形容詞・形容動詞のどれですか? |
▶ 解答:形容詞(けいようし) 古文の形容詞は言い切りが「〜し」で終わります。現代語の「〜い(待ち遠しい)」が古文では「〜し(心もとなし)」になると覚えておけば、他の形容詞もすぐに見抜けます。 |
第3問 ★★★ 古文:ここにいと清げなる人あり。 (現代語訳:ここに、たいそう美しい人がいる。) アンダーラインの「あり」の連体形を答えなさい。 |
▶ 解答:ある ラ変は終止形がイ段(あり)、連体形がウ段(ある)と別の形になります。四段活用では終止形と連体形が同じ形でしたが、ラ変はここが違う。「ある人」「あるとき」という使い方で馴染みのある形です。 |
「変身する言葉(用言)」と「変身しない言葉(体言)」── あなたはいま、古文の動詞が「後ろの言葉に合わせて変身している」と感じられましたか? |
YBA教育研究会
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