【古文・古典文法】『用言』の正体|なぜ「古文は暗記」と割り切る人の脳はトラップでフリーズするのか?

【古文・古典文法】『用言』の正体|なぜ「古文は暗記」と割り切る人の脳はトラップでフリーズするのか?

古典文法シリーズ vol.1

古典文法のキホン
「用言(ようげん)」って何?

動詞・形容詞・形容動詞 ── 変身する言葉の正体

「古文は、とにかく暗記」──そう割り切って向き合ってきた人は多いはずです。

たしかに覚えることは少なくない。けれど、古典文法の根っこにあるのは暗記ではなく、論理です。

その論理の入り口となるのが、今回テーマにする「用言(ようげん)」という概念です。

この論理を一度つかむと、古文の文章が「暗号」から「言葉」に見えてきます。

◆ 用言とは何か ── 一言で言うと

用言を一言で定義するなら、

「動きや様子を表す、形が変わる言葉」

これだけです。

「形が変わる」というのがポイントです。まずはメンバーを確認しましょう。

◆ 用言の3つのメンバー

用言に属する品詞は、たった3種類だけです。現代語とほぼ同じカテゴリです。

品詞表すもの現代語 → 古文の例
動詞動き・作用食べる・書く → 食ふ・書く
形容詞様子・感情美しい・嬉しい → 美し・うれし
形容動詞様子・状態静かだ・綺麗だ → 静かなり・清げなり

古文が特別難しいわけではありません。カテゴリそのものは現代語と同じです。問題は、形の変わり方のルールが現代語と少し異なることにあります。

なお、後で学ぶ「助動詞」も活用しますが、品詞分類では用言とは別に扱います。混乱しやすい点なので、頭の片隅に置いておきましょう。

◆ なぜ「用言」という名前なのか

「用(はたらき)のある言葉」だから「用言」と呼びます。

文の主役は名詞(「花」「人」「月」)ですが、その主役が何をしているか、どんな状態かを説明するはたらきを担うのが用言です。

── 例文 ──

・花(名詞)が、咲く(用言=動詞)

・花(名詞)が、美し(用言=形容詞)

・花(名詞)が、あてなり(用言=形容動詞)

よく教科書でセットになる「体言(たいげん)」は、その反対です。「体(からだ)のある言葉」=名詞のことで、こちらは形が変わりません。

用言 ── 変身する体言 ── 変身しない
動詞・形容詞・形容動詞名詞(犬・学校・月 など)
後ろの言葉に合わせて語尾が変化するどんな場面でも形は変わらない

◆ 「変身」の正体 ── 活用とは何か

用言の最大の特徴は、後ろに続く言葉に合わせて語尾が変化することです。この変化を「活用(かつよう)」と呼びます。

活用は「変身」のルールと言い換えてもいいでしょう。例えば動詞「書く」は、後ろに来る言葉によって語尾が次のように変わります。

・書 + ず(〜ない)

・書 + て

・書。 (言い切り)

・書 + とき

・書 + ば(〜ので)

・書。 (命令)

語尾の変化を母音で整理すると、a・i・u・u・e・e と4つの段にまたがっています。だから「四段活用(よんだんかつよう)」と呼びます。現代語の「五段活用」の先祖にあたります。

この変化のパターンには名前があります。6つの「活用形」です。

◎ 6つの活用形(「書く」で覚える)

活用形書く の場合母音意味・接続
未然形書かa+ず / まだ起きていない(未だ然らず)
連用形書きi+て / +き(過去)
終止形書くu言い切り(文の終わり)
連体形書くu+とき / +人(体言に続く)
已然形書けe+ば / すでに起きた(已に然り)
命令形書けe命令(言い切り)

活用形の名前は、それぞれ意味を持っています。

・「未然形」= 未だ然らず = まだそうなっていない状態

・「已然形」= 已に然り = すでにそうなっている状態

名前の意味を知っておくと、どんな文脈で使われるかが自然に結びつきます。ただし、実際の判定では「名前の意味」だけでなく、後ろに何が続くかを見るのが一番確実です。意味と接続をセットで覚えましょう。

◆ 現代語感覚の落とし穴

「現代語と似ている」と感じた方は鋭いです。しかし、古文には現代人が必ず引っかかるトラップがあります。

例えば「着る」という動詞。

現代語:着ない / 着ます / 着

古 文:着ず / 着て /

古文の「着る」の言い切り(終止形)は、「き」の一文字だけです。「着る。」ではなく「き。」で文が終わります。

現代語の感覚で読むと「え、ここで文が終わってるの?」と脳がフリーズするのが古文の動詞の難所です。

◆ テスト頻出の「変格活用」9語

古文の動詞の大半は、これまで説明したルール通りに変化します。しかし、そのルールを完全に無視して自分勝手に変化する動詞が9語だけ存在します。これを「変格活用(へんかくかつよう)」と呼びます。

この9語は定期テスト・入試で頻繁に問われます。そして、これ以外の動詞も四段活用とは限りません。四段のほかに上二段・下二段・上一段・下一段など複数のパターンがありますが、これら通常の活用はルールに従って変化します。変格活用の9語だけが、そのルールから外れる特別な存在です。

種類語(すべて覚える)
ナ行変格活用死ぬ / 往ぬ(去ぬ)
ラ行変格活用あり / をり / はべり / いまそかり
カ行変格活用来(く)
サ行変格活用す / おはす

特に注意が必要なのはラ行変格活用です。普通の動詞の終止形はウ段(u)で終わりますが、ラ変のグループは終止形がイ段(i)で終わるという特殊ルールを持っています。

⚠ テストの罠:「あり」の連体形は?

普通の動詞なら終止形と連体形が同じ形でも、ラ変は違います。

終止形:あり(イ段) → 連体形:ある(ウ段)

「あり」が後ろに名詞を伴うときは「ある人」「あるとき」のように形が変わります。終止形と連体形が別の形になるのがラ変の特徴です。

◆ 確認問題(3問)

第1問 ★☆☆

古文:桜の花さけば、見に行く。

(現代語訳:桜の花が咲いたので、見に行く。)

アンダーラインの「さけ」は何形ですか?

▶ 解答:已然形(いぜんけい)

後ろに「ば(すでにそうなっているので)」が続いているので已然形です。語尾が「e(け)」になっているのを確認できれば完璧です。

第2問 ★★☆

古文:夜の明くるは、いと心もとなし

(現代語訳:夜が明けるのは、とても待ち遠しい。)

アンダーラインの「心もとなし」は、動詞・形容詞・形容動詞のどれですか?

▶ 解答:形容詞(けいようし)

古文の形容詞は言い切りが「〜し」で終わります。現代語の「〜い(待ち遠しい)」が古文では「〜し(心もとなし)」になると覚えておけば、他の形容詞もすぐに見抜けます。

第3問 ★★★

古文:ここにいと清げなる人あり

(現代語訳:ここに、たいそう美しい人がいる。)

アンダーラインの「あり」の連体形を答えなさい。

▶ 解答:ある

ラ変は終止形がイ段(あり)、連体形がウ段(ある)と別の形になります。四段活用では終止形と連体形が同じ形でしたが、ラ変はここが違う。「ある人」「あるとき」という使い方で馴染みのある形です。

「変身する言葉(用言)」と「変身しない言葉(体言)」──
この区別を意識するだけで、古文の文章の見え方が変わります。

あなたはいま、古文の動詞が「後ろの言葉に合わせて変身している」と感じられましたか?
その感覚が、古典文法を「丸暗記」から「理解」に変える、最初の一歩です。

YBA教育研究会

YBA教育研究会では、各教科の学習を、単なる暗記や作業ではなく、「なぜそうなるのか」を考えるところから指導しています。

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