【総合型選抜・推薦】志望理由書の罠──学部名で比べるのをやめ「シラバスとゼミ」まで引き下げる突破法

【総合型選抜・推薦】志望理由書の罠──学部名で比べるのをやめ「シラバスとゼミ」まで引き下げる突破法

YBA教育研究会

志望理由書の書き方|「なぜこの大学か」が
書けない人のための3つの視点

総合型選抜・学校推薦型選抜の志望理由書(志望動機書)を書き始めた生徒が、必ず一度は手を止める瞬間がある。「貴学の教育理念に共感し」「カリキュラムが充実しており」――書いては消し、書いては消し、気づけばどのパンフレットにも書いてあるような一文だけが残っている。

原因はシンプルだ。大学案内の表紙を眺めている限り、経済学部はどこも同じに見えるし、看護学部であっても、表面の言葉だけを追えば似たように感じてしまう。「なぜ他の大学ではなく、この大学なのか」という一点だけが、どうしても言語化できない。これは才能の差ではなく、努力不足でもない。調べる場所がズレているだけだ。

  • 志望理由書の例文を読んでも、自分の文章に置き換えられない
  • 大学のパンフレットを見ても、どの大学も同じに見える
  • 「なぜ本学なのですか」と面接で聞かれたとき、答えられる自信がない

このどれかに当てはまるとしても、書き方のコツだけで解決する問題ではない。多くの場合、大学を見る深さと、自分の経験を整理する深さが、両方足りていないだけだ。

悪い例 → 改善例

✕ 貴学の少人数教育と実践的なカリキュラムに魅力を感じました。

◯ 私は高校で地域の高齢者支援活動に参加し、制度があっても支援につながらない人がいることに関心を持ちました。貴学の〇〇演習では、地域福祉の現場調査を通じて、制度と生活のずれを学べる点に惹かれています。

経験:高齢者支援活動 → 問題意識:制度があっても支援につながらない人がいる → 大学での学び:地域福祉の現場調査

違いは、大学の紹介文を語っているか、自分の問題意識を語っているか、この一点だけだ。この記事では、その差を生む3つの視点を、順番に見ていく。

なぜ「貴学ならではの理由」が見つからないのか

生徒が見ているのは、いつも大学の「表紙」だ。学部・学科という単位でしか大学を比較していないため、キラキラした言葉の並びだけが目に入り、実体の違いには辿り着けない。大学案内そのものが悪いわけではない。入り口として調べるには有効だが、志望理由書の決め手にするには、抽象度が高すぎるのだ。

「なぜこの大学なの?」と正面から尋ねても、多くの生徒は答えに詰まる。この問いは抽象度が高すぎて、比較する軸を持たない生徒には答えようがないからだ。必要なのは、比較の単位を「学部」から、もっと小さな、もっと具体的な何かへ引き下げてやることだ。

POINT

他大学と横並びで比べようとするより、「この大学で学びたい一点」を具体的に絞るほうが早い。抽象度を下げるほど、他大学との違いを説明しやすくなる。

志望理由書を書く前に、自分の問題意識を書き出す

ここから先、教員・ゼミ・シラバスを調べる方法を具体的に紹介していく。ただし、順番を間違えると逆効果になる。大学固有の情報を先に拾い集めても、それだけでは志望理由書にはならない。先に必要なのは、「自分は何に問題意識を持っているのか」という一点だ。

問題意識とは、最初から立派な社会問題である必要はない。「なぜこの地域では高齢者が孤立しやすいのか」「なぜ部活動では一部の人に負担が偏るのか」「なぜ支援制度があっても利用できない人がいるのか」――自分が日常の中で引っかかった違和感で十分だ。

地域医療に関心を持った経験、部活動で感じた組織運営の難しさ、家族の介護を通じて見えた社会保障の課題――こうした自分自身の経験や関心が先にあって、そこに大学の具体的な学びが重なったとき、初めて「この大学でなければならない理由」になる。

志望理由書の4段階

① 高校までの経験
② そこで生まれた問題意識
③ 大学で学びたい内容
④ 将来どう生かすか

その違和感を、大学の授業・ゼミ・実習・研究とつなげたとき、志望理由書は初めて「大学の紹介文」ではなく「自分の学びの計画」になる。

志望理由書で差がつく大学研究① 教員・ゼミ・演習まで降りる

大学を具体的に見るときは、学部名だけで止まらず、教員・ゼミ・研究室・演習科目まで降りて見る必要がある。理系や大学院進学を前提とする学部では、教授の研究室がそのまま学びの単位になっていることが多い。一方、文系学部や看護、教育、社会福祉、国際系などでは、1・2年次にゼミへ入らない大学も少なくない。その場合は、演習科目や実習先の傾向まで見ればよい。

大学の公式サイトから教員一覧を開き、興味のあるキーワードで検索させる。論文の本文をすべて読む必要はない。まずはタイトル、研究キーワード、研究室紹介、ゼミ紹介を見るだけでよい。あるいはゼミが実際に行っているフィールドワークの内容を1つ見つけさせる。ただし、そこで終わらせないことが大切だ。「なぜそのテーマに関心を持ったのか」「自分の経験や問題意識とどうつながるのか」まで、言葉にしてみる。ここまでやって、初めて志望理由書に使える材料になる。

注意:教授名に寄せすぎるリスク

特定の教授名だけに志望理由を寄せすぎるのは危険だ。教員は異動・退職することがあり、人気ゼミには選抜がある。教授名だけに依存すると、大学全体への理解が弱く見えてしまう。「その教授の研究に関心がある」で止めず、「その学科全体でどのように学びたいか」まで広げておく必要がある。

安全な型の例:「〇〇教授の研究に関心があります。さらに、貴学では〇〇演習や〇〇実習を通じて、関連分野を段階的に学べる点にも魅力を感じています。」

具体例(経済学部)

✕ 貴学の経済学部は実践的な学びが充実しているため志望しました。

◯ 私は地元商店街の空き店舗が増えていることに疑問を持ち、文化祭で地域店舗と連携した企画を行った経験から、地域経済の衰退に関心を持ちました。貴学の〇〇教授が進める都市経済学ゼミでは、商店街の人流データと消費行動を分析する研究が行われており、この関心を具体的に深められると考えています。

志望理由書で差がつく大学研究② パンフレットではなく「シラバス」を読む

大学案内では、講義の概要や魅力がわかりやすくまとめられている。しかし、実際の授業の細部までは、シラバスを見ないと見えにくい。シラバスとは、各授業の目的・授業計画・評価方法・使用教材などをまとめた、講義の設計図のようなものだ。同じ「経済学入門」という科目名であっても、指定教科書、課題の出し方、授業がディベート中心なのかデータ分析中心なのかは大学ごとに違うことが多い。

比較の単位見えるもの書ける志望理由のレベル
大学案内・パンフレット学部の理念、キャッチコピーどの大学にも当てはまる抽象論
シラバス教科書、授業計画、課題、評価方法その講義固有の魅力
教員一覧・論文・ゼミ研究テーマ、フィールドワーク他大学との違いを説明しやすい具体的な材料

シラバスの情報量は大学・教員によって差があるが、大学案内よりは具体的な比較材料になることが多い。ただし、シラバスを読むだけで終わらせないことが大切だ。「実際のデータを用いて分析を行う点に惹かれた」と書いても、それだけではまだ弱い。自分の過去の経験・関心・将来の課題と結びつけたとき、初めて自分の言葉になる。

志望理由書で差がつく大学研究③ 主語を大学から「自分」に変える

大学側が用意している「売り」――留学制度、施設、地域連携――は、そのままでは大学の紹介文にしかならない。「留学制度が充実している」と書いた瞬間、主語は大学のままだ。これを自分の行動計画に落とし込み、主語を「自分」に変える。

「高校時代に難民問題に関心を持ったため、貴学の〇〇留学プログラムへの参加を目指し、2年次までに語学力と基礎知識を身につけたうえで、〇〇国の現地事例を調査したい」――このように、きっかけとなった経験と、そこから逆算した準備の流れを示すだけで、志望理由書は大学の紹介文の丸写しではなく、自分がその大学でどう学ぼうとしているかを示す「学びの計画」に変わる。大きな説得力の差は、ここで生まれる。

ここまでの3つの視点を貫いているのは、志望理由書が問われているのは大学の紹介ではなく、「自分の過去→大学での学び→将来」という一本の線だという点だ。教授名やシラバスの用語を並べるだけでは、調べた情報の貼り付けに見えてしまう。

志望理由書に書いた内容は、面接でそのまま聞かれる

総合型選抜・学校推薦型選抜では、志望理由書と面接がセットになっている。教授名やシラバスの内容を書けば、面接でそこを深掘りされる可能性が高い。「その教授の研究の、具体的にどの点に関心があるのか」「なぜその調査方法を選んだのか」――名前や用語を出すだけで準備を止めると、面接で答えに詰まりやすくなる。

書いた一文ひとつひとつについて、「なぜそう思ったのか」を自分の言葉で説明できるところまで準備しておく。これは志望理由書を書く段階から、すでに面接対策になっている。

保護者・指導者がかけるべき、たった一つの問い

「なぜこの大学なの?」という問いは、抽象度が高すぎて生徒を固まらせてしまう。代わりに効くのは、次のような具体的でハードルの低い問いだ。

「その大学のホームページで、一番『へぇ、おもしろそう』と思ったページを1つだけスクショして教えて?」

抽象的な「理由」を尋ねるのではなく、具体的な「発見」を1つ持ってきてもらう。スクショが出てきたら、そこで終わらせない。次の3段階を一緒にやってみる。

① スクショを1枚選ぶ
② その中で気になった言葉に線を引く
③ 自分の経験とつながる部分を一文で書く

ここまで踏み込んで初めて、生徒自身の実感に根ざした志望理由書に仕上がっていく。

「なぜこの大学か」は、最初から頭の中にある答えではない。大学の具体的な一点と、自分の経験がつながった瞬間に、ようやく言葉になるものだ。

YBA教育研究会では、志望理由書の添削だけでなく、必要に応じて大学研究や面接対策まで含めて、生徒自身の言葉で志望理由を組み立てます。総合型選抜・学校推薦型選抜の準備でお困りの方は、ご相談ください。

YBA教育研究会では、各教科の学習を、単なる暗記や作業ではなく、「なぜそうなるのか」を考えるところから指導しています。

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