2026年7月1日
TOKYO UNIVERSITY 2003 / 数学の証明問題
円周率は本当に3.14?
「π > 3.05」を厳密に証明せよ
東京大学 前期試験 2003年 数学
「円周率は3.14…」と小学校から習ってきました。でも、そもそも、なぜそれが正しいのか、あなたは説明できますか?
2003年の東京大学入試に、こんな問題が出ました。
■ 問題(東大 2003年 前期)
円周率 π が 3.05 より大きいことを証明せよ。
シンプルに見えて、じつは深い。「3.14と習ったから」は証明になりません。ゼロから論理的に示す必要があります。
鍵となるのは、円に内接する正八角形です。
💡 証明のアイデア
正多角形は円の内側にちょうど収まります。
だから、正多角形の周の長さ < 円の周の長さ。
逆に言えば、正多角形の周長を計算して 2π の下限を作ることができます。
図1:証明のアイデア ─ 内接多角形の周長を使って π の下限を作る
| STEP 1 | 設定:半径1の円に内接する正八角形 |
半径1の円を考えます。この円の周の長さは 2π です。
この円に内接する正八角形を描きます。8つの頂点は等間隔に並び、隣り合う頂点を結ぶ角度(中心角)は:
360° ÷ 8 = 45°
頂点のひとつを A = (1, 0) に置くと、
隣の頂点 B は中心から45°の方向にあるので B = (cos45°, sin45°) = (√2/2, √2/2) です。
図2:半径1の円に内接する正八角形。頂点A・Bと一辺の長さ s を強調。
| STEP 2 | 正八角形の一辺の長さを求める |
一辺の長さ s = AB を求めます。距離の公式を使います。
| 距離の公式 | s² = (1 − √2/2)² + (√2/2)² |
| 展開 | = 1 − √2 + 1/2 + 1/2 |
| 整理 | = 2 − √2 |
| よって | s = √(2 − √2) |
正八角形の周の長さは、この辺が8本なので:
正八角形の周長 = 8√(2 − √2)
| STEP 3 | 「内接する」を使って不等式を立てる |
辺 AB は、同じ2点 A・B を結ぶ円弧より必ず短くなります。これが8か所あるので、正八角形の周長は円周より短い:
8√(2 − √2) < 2π ⟺ 4√(2 − √2) < π
🎯 証明のゴール:この「挟み撃ち」を完成させる
3.05 < 4√(2−√2) < π
左側(STEP4)と右側(STEP3)が揃えば、π > 3.05 が確定する。
| STEP 4 | 4√(2 − √2) > 3.05 を証明する |
ここがこの問題の山場です。√を消しながら、整数・分数だけで不等式を確認します。
▶ 両辺の計算(3.05 = 61/20 として処理)
| 示したいこと | 4√(2 − √2) > 61/20 |
| 両辺 > 0 なので2乗 | 16(2 − √2) > 3721/400 |
| ×400 | 6400(2 − √2) > 3721 |
| 展開 | 12800 − 6400√2 > 3721 |
| 移項 | 6400√2 < 9079 |
| すなわち | √2 < 9079/6400 を示せばよい |
※ 途中で √2 の前に マイナス(−6400√2) がついているため、√2 を右辺に移すと不等号が逆向きになります。「大きいことを示したいのに√2が小さいこと」を示す形になる、これが見かけ上の矛盾の正体です。
※ 9079/6400 は思いつきの数ではありません。3.05 = 61/20 を整理すると自動的に出てくる数です。
図3:√2 と 9079/6400 の大小関係(概念図・正確な縮尺ではありません)
▶ 最終確認:√2 < 9079/6400 を整数計算で検証
両辺 > 0 なので2乗し、差が正であることを確認します。
| 計算 | 9079² − 2 × 6400² = 82,428,241 − 81,920,000 = 508,241 > 0 |
∴ (9079/6400)² > 2 ∴ 9079/6400 > √2 ✓ |
したがって √2 < 9079/6400 が成立。遡れば 4√(2−√2) > 3.05 が示されました。
■ 証明のまとめ
図4:証明の論理フロー
| ① | 半径1の円に内接する正八角形の周の長さは 8√(2−√2) |
| ② | 各辺 < 対応する弧 ∴ 8√(2−√2) < 2π ∴ 4√(2−√2) < π |
| ③ | 4√(2−√2) > 3.05 (9079² − 2×6400² = 508,241 > 0 により確認) |
| ④ | ②③をまとめると: 3.05 < 4√(2−√2) < π ∴ π > 3.05 □ |
■ この問題で問われている力
🔷 内接多角形のアイデア 古代ギリシャのアルキメデスが使った方法。多角形の辺を増やすほど、より精密に π を近似できる。正8角形 → 正16角形 → … と増やせばいくらでも精度が上がる。 | 🔷 √を消す技術 √2 のような無理数を直接比較するのは難しい。「2乗すれば整数どうしの比較になる」という変形は、不等式証明の基本テクニック。 |
📌 なぜ正八角形?
正六角形(6角形)では π の下限は 3.0 にとどまり、3.05 には届きません。
一方、正八角形ならば 4√(2−√2) ≈ 3.061… となり、3.05 をクリアできます。
「どの多角形を選ぶか」も含めて、解法設計の力が問われているのです。
※ この近似値は直感的確認のためのもので、答案では STEP4 のように不等式で厳密に示す必要があります。
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