2026年6月26日
YBA教育研究会|英語講座
中学文法が、シェイクスピアを解く鍵だった
── 名言4選で学ぶ英文法の核心
シェイクスピアは難解だ──そう思われている。だが、その名言を文法で分解すると、意外な事実が浮かび上がる。
不定詞、部分否定、間接疑問文──これらはすべて中学から高校初級で学ぶ基本ルールだ。シェイクスピアの魅力は、難しい語彙や複雑な構文だけにあるのではない。シンプルな文法構造に、深い意味を圧縮する力にもある。中学文法を正確に理解することで、名文の骨格が見えてくる。
4つの名言を入口に、英文法の「なぜそうなるのか」を解き明かしていこう。
◆ 名言 01 ── 『ハムレット』
“To be, or not to be, that is the question.”
生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。
◎ 文法ポイント:不定詞の名詞的用法(中3)
To + 動詞の原形 で「〜すること」という名詞のカタマリを作る。文の中で主語・目的語・補語の役割を果たせる。
| To be | 「存在すること」=生きること(文全体の主語) |
| not to be | 「存在しないこと」=死ぬこと(not は to の直前に置く) |
| that is the question | 前の2つ全体を that で受けて「それが問題だ」 |
◆ 入試ポイント
不定詞の否定は not to be(not を to の直前)。「to not be」という語順も口語では使われるが、学校文法・入試英語では not to + 動詞の原形 が正解。
◆ 名言 02 ── 『ヴェニスの商人』
“All that glisters is not gold.”
輝くものすべてが、金とは限らない。
※ 原文は glisters。現代では “All that glitters is not gold.” の形でもことわざとして広く知られています。
◎ 文法ポイント①:関係代名詞 that
All that glisters の that は関係代名詞。先行詞 All を修飾して「きらめくところのすべて」を意味する。that glisters という関係詞節全体が、All を説明しているカタチだ。
◎ 文法ポイント②:部分否定(入試頻出)
「All ~ not ~」は「すべてが〜というわけではない」という部分否定。全否定と混同しやすいので注意。
| カタチ | 意味 | 種類 |
|---|---|---|
| All ~ not ~ | すべてが〜とは限らない | 部分否定 |
| None ~ / Not any ~ | まったく〜ない | 全否定 |
「外見が輝いていても本物の金とは限らない」──見た目に惑わされるなという教訓を、シェイクスピアは部分否定という文法で、短く鋭く表現した。All と not の組み合わせは入試でも繰り返し出題される定番パターンだ。
◆ 名言 03 ── 『ロミオとジュリエット』
“What’s in a name?”
名前の中に、いったい何があるというの?
◎ 文法ポイント:疑問詞 what の本質と修辞疑問
What is in a name? の短縮形。What が「何が」という主語の役割を果たしている(What = 主語、is = 動詞、in a name = 前置詞句)。
形は疑問文だが、これは答えを求める普通の質問ではない。「名前なんか関係ない」と訴えるための修辞疑問(レトリカル・クエスチョン)だ。この直後にジュリエットはこう続ける。
“A rose by any other name would smell as sweet.”
どんな名前で呼ばれても、バラは同じように甘く香る。
◆ 2文を合わせて読む
ジュリエットが言いたいのは「ロミオがモンタギュー家の人間という名前に、何の意味があるの?」という問いだ。by any other name(どんな別の名前で呼ばれても) という前置詞句の使い方も、英作文で応用できる表現として覚えておこう。
◆ 名言 04 ── 『ハムレット』
“We know what we are,
but know not what we may be.”
私たちは自分が何者かを知っている。しかし、自分が何者になれるかは知らない。
◎ 文法ポイント①:間接疑問文(中3)
what we are と what we may be は、どちらも疑問詞 what で始まる間接疑問文。間接疑問文のカギは語順が「普通の文」と同じになること。
| 種類 | 語順 | 例 |
|---|---|---|
| 直接疑問文 | 疑問詞 + 助動詞 + 主語 | What are we? |
| 間接疑問文 | 疑問詞 + 主語 + 動詞 | what we are |
◎ 文法ポイント②:know not という古い語順
後半の know not に注目しよう。現代英語なら do not know と書く。シェイクスピアの時代(近代英語初期)は、助動詞 do を使わずに 動詞の直後に not を置く 否定が普通だった。言語も時代とともに変化する──英語を歴史の中で捉えると、文法の「なぜ」がより深く見えてくる。
◆ この名言が入試に出やすい理由
what we are(現在の自分)と what we may be(未来の自分)という2つの間接疑問が、but で対比されている。文法の美しさと内容の深さが一致している文だ。入試問題で「語順を正しく並べ替えよ」という形で出題された場合、この対比構造を思い出せば答えを導ける。
400年前の劇作家が書いた言葉が、今も世界中で引用され、教材や試験問題でも幅広く扱われている。それは文法が古びないからではなく、人間の根本的な問いが古びないからだ。
不定詞、部分否定、間接疑問文──これらは「ルールを暗記する」ためにあるのではない。言いたいことを正確に伝えるための道具だ。シェイクスピアの名文は、そのことをよく示している。
あなたは “what you may be” を、どんな言葉で語るだろうか?
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