仮定法過去・過去完了の使い分け|なぜ「今の話」なのに過去形? 図解でわかる『距離』の英文法

仮定法過去・過去完了の使い分け|なぜ「今の話」なのに過去形? 図解でわかる『距離』の英文法

YBA English Grammar

If I were はなぜ過去形?

仮定法の”現実からの距離”をゼロから解説

“If I were you…”──なぜ現在のことを話しているのに過去形なのか。この疑問を解くカギは、時制ではなく「現実からの距離」という概念にあります。

英語の過去形には、「時間を遡る」用法と「現実から離れる」用法の二種類があります。仮定法とは、過去形を使って「これは現実ではない」と宣言する文法です。時間の話ではなく、リアリティの話なのです。

現実の世界

I don’t have much free time.

現在形 ── 事実を述べている

仮定の世界

If I had more free time…

過去形 ── 現実から一歩離れた

01過去形は「時間」ではなく「距離」を表す

仮定法でつまずく理由はほぼ一つです。「過去形なのに今の話をしている」という見かけの矛盾。でも、そもそも過去形には二つの仕事があります。ひとつは「昨日の話」をすること。もうひとつは「現実ではない話」に一歩引くこと。仮定法の過去形は後者です。

直説法 ── 起こりうる条件

If I have time tonight, I’ll call you.

今夜時間があれば電話するよ。

現在形 ── 実際にあり得る

仮定法過去 ── 非現実な仮定

If I had more time, I’d learn Arabic.

もっと時間があればアラビア語を学ぶのに。

過去形 ── 現実には時間がない

02「were」はなぜ I・he・she にも使うのか

仮定法過去では、主語が I / he / she / it であっても were を使います。これは「事実ではない」という強いシグナルを出すための専用の形です。現代の口語では was も使われますが、were を使うことで「これは現実の話ではない」ということを文法レベルで宣言できます。

If I were a professional athlete, I would train six hours a day.

もしプロのアスリートだったら、毎日6時間練習するだろう。

実際はアスリートではない ── were がその非現実を宣言する

If she were here right now, she would know exactly what to say.

もし彼女が今ここにいたら、何を言うべきかわかるはずなのに。

she に対しても were ── 「いない」という現実が前提

仮定法過去:If + 主語 + were / 動詞の過去形 〜, 主語 + would / could / might + 動詞の原形

03仮定法過去完了 ── 過去の「もしも」には二重の距離が必要

「あの時こうしていれば」という過去の後悔・反実仮想を表すには、さらに一段階遠くへ離れる必要があります。それが had+過去分詞(過去完了形)です。現実の過去からも距離を置くために、文法がもう一つ「遡る」仕組みになっている。この「二重の距離」という感覚を掴めれば、形を丸暗記しなくてよくなります。

If I had studied harder, I would have passed the exam.

もっと勉強していれば、試験に合格できていたのに。

過去の後悔 ── 実際には勉強が足りなかった

If we had left ten minutes earlier, we wouldn’t have missed the train.

あと10分早く出ていれば、電車に乗り遅れなかったのに。

起きてしまった現実への反実 ── もう変えられない過去

仮定法過去完了:If + 主語 + had + 過去分詞 〜, 主語 + would / could have + 過去分詞

04wish の後ろにも「距離の過去形」が来る

I wish + 過去形 は「〜だったらいいのに(でも現実は違う)」という意味です。wish はすでに「叶っていない願望」というニュアンスを持っているので、後ろの過去形は「距離」の働きをしています。if と全く同じ論理です。

I wish I could speak another language fluently.

もう一つの言語を流暢に話せたらなあ。

現実には話せない ── could が「今の非現実」を表す

I wish I had taken that job offer when I had the chance.

あの時あのオファーを受けていればよかった。

wish + 過去完了 ── 過去の後悔バージョン

wish の使い分け

wish + 過去形今の現実への願望(でも現実は違う)
wish + 過去完了過去の現実への後悔(もう変えられない)

仮定法 早見表

If I were〜仮定法過去現実には違うことを前提とした仮定
If I had done〜仮定法過去完了実際には起きなかった過去への反実
I wish I could〜wish+仮定法過去現実にはそうでないことへの願望
I wish I had done〜wish+仮定法過去完了あの時こうしていれば、という後悔
If it is〜直説法(仮定法ではない)実際に起こりうる条件文

仮定法の過去形は、過去を言うための形ではない。現実ではないことを示すために、あえて一歩引いた形を使っている。それだけです。「昔の話」と「距離の表現」── 同じ形に二つの仕事を持たせた、これが英語という言語の設計です。

YBA教育研究会 ── 英語文法シリーズ